
■SINGING AEON 2
イオンのCMの続編に出ることになった。
今回は「タスマニア・ビーフ」の宣伝という、より商品寄りの
企画である。事前にリサーチだけはした。品川・青物横丁にある
イオン/ジャスコの売り場をみて、アーストラリア・
タスマニア州にあるイオン直営牧場のビーフを買ってきたり、
タスマニア関係の本を数冊、読んでみた。メルボルンから
南東に240キロ、フェリーだと14時間半。原生林の残る
南半球の島、というプロフィールが浮かび上がってきた。
その後、僕は山口智子さんの本を読んだ。「反省文・ハワイ」。
最近「AERA 」の表紙でみた、彼女の
レニ・リーフェンシュタールのような意志のある眼が印象に
残っていた。この写真を撮影した写真家の個展をみた後、
僕は山口さんのモノクロームの肖像と対になる風景や映像を、
この本から探したくなったのかもしれない。
誠実な彼女の文章からは、素足で太陽の余熱が残る岩の上を
辿るときの感触がよみがえってきた。
今回の撮影は成城学園の東宝スタジオ。控室は奥が畳で、
どこか小学校の用務員室を想わせたが、数々の日本映画の
名作を作り出してきた現場の誇りが漂っていた。
商品寄りで、情報量の多いCMにはある種の演技力が
要求される。山口さんは素晴らしかった。彼女がわざと
言葉をつっかえるようなシーンを「CMディレクター役」で
みていると、ジョディ・フォスターの「告発の行方」の
後段の法廷シーンのことを思い出したが、素人とはいえ、
加藤淳の方は散々だった。
僕は自分で抱きかかえた大きな地球儀でタスマニアを
指すべき場面で、ニュージーランドを指したりして、
美しい大女優を相手に田舎芝居を延々と繰り返すことになった。
その度にタスマニア・ビーフを焼かされる
フードコーディネーターはうんざりしただろう。
場の雰囲気が悪い方、悪い方に進んで、ジリジリと
追い詰められるような気がした。山口さんの撮影カットは終了。
残るは加藤淳のパートだけになった。
その時、彼女はこう言った。「私たちは一対のもの。
撮影が終わるまで、ここにいます。」
そして、白が似合う美しい山口智子さんは、カメラの向こうで、
いつまでも相手役をつとめてくれた。贅沢すぎる布陣だった。
恐縮した加藤淳の演技はますます混迷を深めたが、
僕は彼女から、大切な何かを、またひとつ学んだような気がした。
2004年10月18日
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